銀行は決算書のどこを見て融資を決めているのか?

銀行は貸借対照表のどこを見ているか?

まずは、債務超過でないか、すなわち純資産がマイナス(資産<負債)でないか?を見ます。

少しだけ純資産がプラスなら、実質的にマイナスでないか疑います。

滞留した売掛金や売れ残った在庫、それから仮払金などを調べ資産として評価できないものがないか確認します。

銀行がマイナス評価する勘定科目

貸付金や仮払金の勘定科目はあるだけで、印象が悪いです。

出来るだけ決算のときまでには、なくなるように努力しましょう。

銀行がマイナス評価する勘定科目とその理由を一覧表にしました。

勘定科目マイナス評価される理由
貸付金・この貸付金は、本当に返済されるのだろうか?とまず疑われます。
・できるだけ貸し付けはしない方がいいですが、貸付した場合もちゃんと返済されていることが大事です。
・特に社長への貸し付けは、融資したお金が社長個人に回るのではないかと疑われます。
仮払金・仮払金や立替金、前払費用などの勘定科目は、赤字にしたくないため経費を精算していないのではないかと疑われます。
・決算までにはできるだけ精算して、決算書に記載されないようにしましょう。
増加している
売掛金
・売掛金が増加していると、回収不能の売掛金があるのではないかと疑われます。
・また赤字を黒字に粉飾すると売掛金が増えることがあるので、粉飾の疑いも持たれます。
・売上が増加して売掛金が増加している場合は問題ありませんので、銀行にそのことを説明してください。
増加している
棚卸資産
・棚卸資産が増加すると、将来売れない在庫が増えたのではないかと疑われます。
また赤字を黒字に粉飾すると棚卸資産が増えることがあるので、粉飾の疑いも持たれます。
・売上が増加して棚卸資産が増加している場合は問題ありませんので、銀行にそのことを説明してください。
減価償却しない
資産
・黒字にするために減価償却をしないことがあります。しかし、銀行もそのことは分かっていますので、意味のないことです。
開発費・赤字を黒字に粉飾したいときに、開発費という勘定科目が使われるときがあります。
・なんでもかんでも開発費に入れないようにしましょう。


銀行が見ている貸借対照表の分析比率

分析比率計算式評価のポイント
自己資本比率(%)(自己資本/総資本)×100・調達した資金のうち、返済しなくてよい資金の割合です。
・この比率が、高ければ高いほどいいですが、50%を超えると倒産しにくいと判断されます。
流動比率(%)と当座比率(%)・流動比率(%)=(流動資産/流動負債)×100
・当座比率(%)=(当座資産/流動負債)×100
・短期的な支払能力を調べるときに使われます。
・流動比率は150%以上、当座比率は100%以上が目安です。
固定比率(%)(固定資産/自己資本)×100・長期的な支払能力を見るときに使われます。
・返済の必要のない自己資本で、いかに固定資産がまかなわれているかを見る指標です。
・100%を下回ることが理想的です。
固定長期適合率(%)(固定資産/自己資本+固定負債)×100・自己資金と長期資金で固定資産をどれだけまかなっているかを見る指標です。
・100%を超えると短期資金で返済しなければならず、資金繰りが苦しくなります。
売上債権回転期間(月)(受取手形+売掛金+割引手形+裏書譲渡手形)/月平均売上高・回収が早くなると数値が小さくなります。
・回収条件と比べて長くないかを銀行は見ています。
棚卸資産回転期間(月)棚卸資産/月平均売上高・この期間が短すぎると、生産活動や販売活動に支障がきたす。一方、長すぎると資金を寝かすことになる。
・適正な在庫であるか銀行は見ています。
固定資産回転率(回)月平均売上高/固定資産・固定資産が有効活用されていると、回転数が高くなる。
・逆に低いと固定資産への過大投資と判断される。
仕入債権回転期間(月)(支払手形+買掛金)/月平均仕入高(又は月平均売上高)・原材料や商品を仕入れてから代金決済までの期間を示す指標です。
・長くなると資金繰りは楽である。
・しかし、支払条件から見て異常な数値は、その原因が何かについて銀行は確認するはずです。


銀行は損益計算書のどこを見ているか?

銀行が損益計算書を見るところは、貸借対照表に比べてシンプルです。

損益計算書の利益(経常利益、当期利益など)が正しいか?本当に利益は出ているのか?を銀行は見ています。

銀行が損益計算書を見ているポイント

銀行は、特に経常利益に注目しています。

経常利益は、臨時の一時的な利益は含まれておらず、文字通り毎期経常的に生じる本業の利益です。

従って、銀行が融資する場合に重視するのが経常利益です。

項目チェックポイント
売上原価、販売費及び一般管理費・本来売上原価や販売費及び一般管理費に入れるべきものを、営業外費用にしていないか。
・また、減価償却を適正に計上しているかどうか。
営業外収益・経常利益をよく見せるため、特別利益に該当するものを営業外収益としていないか。
特別損失・経常利益をよく見せるため、営業外費用を特別損失としていないか。

銀行が見ている損益計算書の分析比率

分析比率計算式計算式の説明
総資本経常利益率(%)(経常利益/総資本)×100・総資産がいかに効率的に利益を生み出しているかどうかを示す指標です。
売上高経常利益率、総資本回転率総資本経常利益率は、売上高経常利益率と総資本回転率に分解できます。
・総資本経常利益率=売上高経常利益率(経常利益/売上高)×総資本回転率(売上高/総資本)×100
・総資本経常利益率に問題があると、売上高経常利益率と総資本回転率に分解して、どちらに問題があるか詰めていきます。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)(営業利益+受取利息・配当金)/支払利息・割引料・1倍を切ると、借入金で資金調達をすることは問題ありと判断されます。
キャッシュフロー税引前当期純利益×(1-実効税率)ー(配当金+役員賞与)+減価償却費等の非資金費用・損益計算書からキャッシュフロー、すなわちお金がいくら増えたか分かります。このキャッシュフローが借入金の返済の原資になるので、銀行にとっては重要な指標です。




松本昌晴税理士事務所
大阪の税理士
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