介護サービス事業者の労働法規の遵守

こんにちは。介護専門税理士の松本昌晴です。

誓約書

居宅サービス事業所の指定を受けるにあたって、提出する書類の中に誓約書があります。

その誓約書の裏面に遵守すべき法令が記載されていますが、介護保険法の改正により労働法規関係の法律が追加されました。

誓約書の一部抜粋(表面)

A 居宅サービス事業所
居宅サービス事業所の指定を受けるにあたって、介護保険法(平成9 年法律第123 号。以下同じ。)第70条第2 項第1 号から第3 号まで、第5 号から第7 号の2 まで、第9 号又は第10 号(病院等により行われる居宅療養管理指導又は病院若しくは診療所により行われる訪問看護、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション若しくは短期入所療養介護に係る指定の申請にあっては第2 号から第6 号まで又は第7 号から第11 号まで)の規定を確認し、内容を理解した上で当該規定に該当しないことを誓約します。
また、居宅サービス事業所の指定を受けるにあたって、介護保険法、その他関係法令等を遵守することを誓約します。

この誓約書の裏面には、介護保険法第70条第2項抜粋が記載されています。指定申請を受けるのに誓約書を提出したところ、ある自治体で裏面を差し替えるように指導がありました。

新しく差し替えた裏面は、「申請者が労働に関する法律の規定であって政令で定めるものにより罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなるまでの者であるとき。」が追加されていました。

これは介護保険法の改正に対応して、付け加えられたのだと思います。

介護サービス事業者の労働法規の遵守

介護事業を含む社会福祉関係の事業は、全産業と比較して労働基準法等の違反の割合が高いと言われています。

社会福祉施設の違反事業場比率は77.50%で、 全産業の68.50%と比べて9%高いです。

このようなことを背景として、改正介護保険法では次の条文が盛り込まれました。

次のいずれかに該当する者については、介護サービス事業者の指定等をしてはならないものとする。
①労働に関する法律の規定であって政令で定めるものにより罰金刑に処せられ、その執行を終わるまでの者、又は執行を受けることがなくなるまでの者
②労働保険の保険料の徴収等に関する法律により納付義務を負う保険料等の滞納処分を受け、引き続き滞納している者

都道府県知事又は市町村長は、指定地域密着型サービス事業者が上記①に該当するに至った場合には、指定の取消し等を行うことができることとする。

労働基準法に違反して、罰金刑以上になった者については指定を認めない、及び現にサービスを提供している事業者が罰金刑を受けたときは指定を取り消すというものです。

事業者が複数の事業所を経営している場合は、違反した事業所のみか、同一法人の事業所全てか等、気になる課題もあります。

労働基準監督年報によれば、労働基準法違反により送検された社会福祉施設は、
平成18年 11件
平成19年 15件
平成20年 11件
で、毎年10件程度が労働基準法違反で送検されています。

罰金刑を受けるのは、是正勧告を再三無視するなどの悪質なケースです。

現在のところ、上記のとおり労働法規違反で刑罰を受ける介護事業者はごく少数ですが、改正介護保険法をきっかけに監督官庁の労働法規遵守に関する指導が増えるかもしれません。



にほんブログ村
にほんブログ村

a:2959 t:1 y:0