介護保険法における「自立」に関する規定

こんにちは。大阪の介護専門税理士の松本昌晴です。

23日に開催された介護給付費分科会において、今回の介護報酬改定の大きなテーマである「自立」と「インセンティブ」について、議論が行われました。

そこで介護給付費分科会で議論された内容や提出された資料を中心に、

  1. 厚生労働省は「自立」をどのように考えているのか?「要介護度改善=自立支援を評価する」と考えているのか?
  2. インセンティブを介護報酬に、どのように反映させようとしているのか?
    などについて、本日以降のブログで触れていきたいと思います。

ただし、いま行われている介護給付費分科会の議論は、論点を拾い出している段階で、秋以降に具体的な議論がなされます。

したがって、今の段階では確定的に介護報酬改定の内容をお伝えすることができないことをご了承ください。

まず、今日は本題に入る前に、厚生労働省が考える「自立」とはどのような概念であるかについて、説明します。

「自立」の概念について

厚生労働省が、「自立」をどの様にとらえているか?

まず、介護保険法における「自立」に関する規定を見てみましょう。

介護保険法第1条(目的)及び第2条(介護保険)に、「自立」という言葉が書かれています。

○介護保険法(平成九年法律第百二十三号)
(目的)
第1条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。
(介護保険)
第2条 介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)に関し、必要な保険給付を行うものとする。
2 前項の保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。
3 第一項の保険給付は、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。
4 第一項の保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。

国の思惑と実現の困難性

今回の介護報酬改定で、「自立」がテーマになった背景には、高齢化による介護費用の増加があります。

国としては、自立支援により重度になる要介護者を少しでも減らすことができたら、社会保障費を抑制することができると考えているのです。

しかし、介護報酬改定によって介護事業者の自立支援を促すことは簡単ではありません。

例えば、要介護度が改善されたというだけで、介護報酬を上げるという改定をすると、介護事業者の中には要介護度が改善しそうな要介護者しかサービスを提供しないといった極端な事例が生じる可能性があります。

また、要介護度が改善されるかどうかは、個々の利用者の環境によって大きく左右されることがあるので、アウトカム評価だけでいいのかという問題もあります。

その他、自立支援については、介護報酬改定で実現するのは難しい問題が多々あります。

このブログに関連する記事

これからの介護事業のキーワード~「自立支援」~
「自立支援」が介護報酬の改定に反映
高齢者の自立支援・重度化防止に取り組む先進的な保険者の取組の全国展開
平成30年介護報酬改定の議論で自立支援を評価することを検討



a:1675 t:1 y:0