アウトカムは要介護度の改善だけで評価しない

こんにちは。大阪の介護専門税理士の松本昌晴です。

介護サービスの質を評価して、それを介護報酬に反映させるかどうか、反映させるにしてもどの様に反映させるかが、今回の介護報酬改定のテーマになっています。

サービスの質を踏まえた介護報酬については、次の3つの視点があり、それぞれの特性に応じた介護報酬が導入されています。

  1. ストラクチャー評価(どういった体制を構築しているか)
    人的配置等を客観的に評価するもので、成果にとらわれないため介護事業者は、利用者の状態改善等の効果をあげようとするインセンティブが働きにくいです。
  2. プロセス評価(どういった介護を行ったのか)
    どれだけ手間をかけたかで評価するもので、ストラクチャーと同様に成果にとらわれず、インセンティブが働きにくいです。
  3. アウトカム評価(利用者の状態改善など)
    サービスによりもたらされた利用者の状態変化等(たとえば在宅復帰等)を評価するものです。

厚生労働省は、上記3つの視点のうち、より効果的・効率的な介護サービスの提供に向けた取組を促すには、利用者の状態改善等のアウトカム(結果)の観点からの評価を活用することが適していると考えています。

アウトカム評価を導入する際の課題

アウトカム評価が適しているとしても、それを導入するに当たっては次の様な複数の課題があります。

画像の説明

出典:第145回社会保障審議会介護給付費分科会資料

上記以外にアウトカム評価を導入する際の課題として、いわゆるクリームスキミングの問題があります。

クリームスキミングというのは、もともとは牛乳から最もおいしいクリームだけをすくいとるという意味で、需要のうち儲かる部分のみの商品やサービスを提供するという場合に使われます。

アウトカム評価におけるクリームスキミングは、介護事業者が改善の見込まれる利用者にサービスを提供するという選別を行って、介護報酬を上げようとするものです。

アウトカムは要介護度の改善で評価しない

上記のアウトカム評価を導入する際の課題として挙げている①~④の項目を見ると、厚生労働省は単純に要介護度の改善だけで介護の質を評価して、自立支援をしているとして介護報酬に反映させようと考えていないことが分かります。

例えば次の④については、訪問介護とデイサービスを利用している人の要介護度が改善されたとしても、それが訪問介護の結果なのか、デイサービスの結果だったのか判断するのは困難であることを示しています。

居宅サービスの利用者は、様々なサービスを組み合わせて利用している場合が多く、要介護度や自立度等の指標が改善したとしても、提供される介護サービスの中のどのサービスが効果的であったかの判断が困難である。

他の項目についても、要介護度の改善だけでアウトカムを評価することが困難である理由が示されています。

このことから、厚生労働省は単純に要介護度が改善したからといって、介護報酬を上げるということはしないと考えられます。

ただし、自治体が取り組んでいる介護サービスの質に関する事例を見ると、評価項目として要介護度を取り入れてところもあり、厚生労働省がどの様な結論を導き出すのか興味あるところです。

画像の説明

出典:第145回社会保障審議会介護給付費分科会資料

評価項目として要介護度を取り入れている品川区の事例

東京都品川区は、アウトカム評価に要介護度を採用していますが、実施要綱を見るとアウトカム評価を導入する際の課題をできるだけ解消する様にしています。

例えば、

  1. 対象施設を品川区施設サービス向上研究会に参加する社会福祉法人等が運営する高齢者施設に限定し、複数の介護事業者がかかわっていません。
  2. また、適切なサービス提供によらない要介護度の軽減においては、その対象としないものとするとして、軽減に至るサービスの質を評価するようにしています。



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