規模のメリットに限界のある地域密着型通所介護は厳しい経営になる
こんにちは。大阪の介護専門税理士に松本昌晴です。
下の表は、厚生労働省から公表された「平成29年介護事業経営実態調査結果」ですが、規模のメリットがハッキリと数字として現れています。
利益率(税引前)は、1ヶ月の延べ利用者数別に次の通りです。
- 300人以下 △4.2%
- 301人~450人以下 △0.1%
- 451人~600人以下 3.8%
- 601人~750人以下 6.2%
- 751人~900人以下 7.9%
- 901人以上 10.0%
延べ利用者数が多くなるほど、利益率が高くなっています。
これが規模のメリットで、デイサービスの経営者が目指すべき方向の一つを示すものです。
定員18人以下の地域密着型通所介護は規模に限界がある
今回の介護報酬改定は、大規模の通所介護の報酬が下げられることから、規模のメリットを追求すると将来も介護報酬を下れるのではないか?
「そうであるなら小規模のままでいい」という選択もあるのではないか?と考えられている方もおられると思います。
しかし、基本的には規模の拡大を目指さないと、上記の数字を見ても分かるように、利益は大きくならないでしょうし、そこで働いている人の給料を上げることも難しくなります。
地域密着型通所介護は、定員18人以下という上限が決められているので、規模のメリットには限界があります。
このまま地域密着型通所介護を続けて行くということは、将来にわたって規模のメリットを追求しないということであり、従業員の給料は上げられないという選択をしたのと同じことになります。
規模拡大には経営能力が必要
一方で、家族や気の合った友人だけで、稼働率を100%に常に維持しながら地域密着型通所介護を続けるという選択はあるかと思います。
介護報酬が下げられ、それによって売上が減れば、自分たちの給料を下げればいいと考えるのであれば、価値観や考え方の違う従業員を採用して苦労することに比べれば精神的にも非常に楽です。
数字だけを見ていると規模を拡大すれば利益が増えるという結果になり間違いないのですが、その規模を拡大するには経営能力が必要になってきます。
これが非常に難しいことです。
規模を拡大すると、社長の目が行き届かなくなり、あちこちで問題が生じます。
社長の分身になるような部下が何人もいて、社長の指示をいちいち仰がなくても実行できるようになっていれば、規模のメリットを得ることができるでしょうが、そうでなければ規模を拡大しても赤字になり、最悪の場合は借金を抱えて倒産ということにもなりかねません。
経営計画とそれに連動した人事評価制度があり、社長の価値観に共感する幹部が育っていることが、規模拡大の前提条件であると考えています。
安易に利益が増えるという数字だけをみて、規模を拡大しないことです。
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