高齢者住宅の厚生労働省から見た問題点

こんにちは。大阪の介護専門税理士の松本昌晴です。

昨日のブログで高齢者住宅の問題を取り上げましたが、今日のブログではもう少し詳しく述べたいと思います。

高齢者住宅の問題とは

  1. 入居条件が併設の介護事業所を必ず利用すること。
  2. 区分支給限度額いっぱい使っていること。

です。

多くの高齢者住宅のビジネスモデルは、家賃月8万円、食事代などを含めて月10万円としています。

非常に安いタイプになっています。

低価格型の高齢者住宅が全国的にかなり増えました。

低価格型の高齢者住宅のビジネスモデル

このビジネスモデルの特徴は、家賃、食事代などを月10万円以内に押さえ安い料金で入居してもらうと同時に、そこで生じた赤字を補填するため高齢者住宅の入居条件として、

  1. たとえば1Fに併設している訪問介護やデイサービスを必ず利用すること。
  2. 利用者が1ヵ月1割負担で介護保険を利用できる限度額である区分支給限度額をいっぱい使うこと。

としていることです。

区分支給限度額いっぱい使っている高齢者住宅は、事業計画書やチラシ、パンフレットなどを見れば分かります。

例えば、事業計画書を見ると介護の売上の根拠が、次のように区分支給限度額に基づいて計算されています。

たとえば、要介護1の方の年間売上が、10人×16,692単位×10円×12ヶ月=20,000,000円となっています。

このような事業計画を立てているということは、入居条件として併設している自社の訪問介護事業所やデイサービスを利用することを前提としています。

また、高齢者住宅のチラシやパンフレットなどに、1ヶ月の介護費用負担金額が、例えば要介護1の方で1万6千円程度になっています。

このように家賃や食事代などだけでは赤字でも、併設している介護事業所で利益を取ってトータルでプラスにしている高齢者住宅は多いです。

この場合、ケアマネさんが作るケアプランは、ご利用者に適した介護サービスは何かという視点では作成されていません。

ケアマネさんは、いかに区分支給限度額までいっぱい使い切るかという視点でケアプランを作成しています。

区分支給限度額をいっぱい使っている事例

それでは、具体的にどの様にしてケアプランを作成して区分支給限度額をいっぱい使っているのでしょうか?

一つの典型的な事例をご紹介しましょう。

20分未満の身体介護として、起床介助(朝起きるときのお手伝い)をして、1ヶ月で受け取る介護報酬は一人あたり140単位×10円×30日=42,000円になります。

一方、夜の就寝介助も1ヶ月一人あたり42,000円です。

このように、起床・就寝介助で1ヶ月一人あたり84,000円になります。

要介護1の方ですと区分支給限度額が1カ月166,920円でから、身体0の20分未満の身体介護である起床・就寝介助だけで区分支給限度額の約半分になります。

残りの半分を併設している訪問介護やデイサービスを使って、区分支給限度額をいっぱいいっぱい使い切ります。

次の円グラフをご覧ください。

【「20分未満の身体介護」利用者の住居の形】
利用者の住居の形
出典:第111回(平成26年10月22日)の社会保障審議会介護給付費分科会

「20分未満の身体介護」を利用している方の住居は、有料老人ホームが全体の46.5%、サービス付き高齢者向け住宅で22.6%で、2つ合わせて約7割を占めています。

いかに、高齢者住宅で「20分未満の身体介護」が利用されているかが分かります。

そして、その多くが上記の問題を含んでいることになり、厚生労働省としても対策を検討しなければならない状態になっています。

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松本昌晴税理士事務所
大阪の税理士
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