NPO法人に詳しい税理士

NPO法人が障害福祉サービスを行う場合、法人税の納税義務があるのか?

NPO法人は、次の34種類の事業をすると、その事業から生じた所得に対して法人税が課税されます。

1.物品販売業2.不動産販売業3.金銭貸付業4.物品貸付業
5.不動産貸付業6.製造業7.通信業8.運送業
9.倉庫業10.請負業11.印刷業12.出版業
13.写真業14.席貸業15.旅館業16 料理店業その他の飲食業
17.周旋業18.代理業19.仲立業20.問屋業
21.鉱業22.土石採取業23.浴場業24.理容業
25.美容業26.興行業27.遊技所業28.遊覧所業
29.医療保健業30.技芸教授業31.駐車場業32.信用保証業
33.無体財産権の等を行う事業34.労働者派遣

障害福祉サービスを行う場合、法人税の納税義務があるのか?

これまで障害福祉サービスは、上記34業種にないので法人税を納税する義務はないとしていたところが多く、また税務署に確認しても収益事業に該当しないから納税義務がないと回答したところもありました。

ところが、質疑応答事例「NPO法人が障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う場合の法人税の納税義務について」(下に掲載)が、2017年7月14日に国税庁のホームページに掲載され、障害福祉サービスは34業種に該当するとされたため、今まで法人税を納税していなかった事業所は大混乱しているという状況です。

さらに、追い打ちをかけるように平成29年7月31日付けで、 厚生労働省から各自治体の障害保健福祉担当宛に、国税庁の質疑応答事例を管内市町村及び関係団体等に対して周知するように事務連絡(下に掲載)しています。

NPO法人の対応

この様な状況でNPO法人には不安が広がっていますが、NPO法人の対応も次のように様々です。

  1. 課税を不服として争う法人や
  2. 国税庁長官に撤回を求める動きがあります。また、
  3. 「収益事業開始届出書」(下に掲載)を提出して、法人税を納税しようとするところや、さらには
  4. 過去3年間に遡って修正申告しようとするNPO法人まであります。

個人的見解

日本国憲法第30条は、「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負う。」と定め、さらに第84条で「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。」とされています。

これを租税法律主義といい、何人も法律の根拠がなければ、租税を賦課されたり、徴収されたりすることがないとする考え方です。

そもそも「質疑応答事例」は法律ではなく強制力はありません。「質疑応答事例」に基づいて課税することは、納税者保護や予見可能性に問題があり、租税法律主義に反することになると考えられます。

それでは、課税を不服として争うのかどうか?

以下は、私の個人的な見解です。

一番重視することが、ご利用者である障がい者や従業員とその家族であると考えるのなら、いつまでも不安定な状況で事業を続けることは避けなければなりません。

さらにNPO法人の中には、相当の利益を出しているところも実際あります。

そこで、私は「収益事業開始届」を提出し、質疑応答事例が掲載された2017年7月14日以降、最初に開始する事業年度から法人税を納税することを税務署に交渉することをお勧めします。

一般の営利企業であれば、過去3年の修正申告は当然ですが、今回の質疑応答事例は先ほども述べました通り、日本国憲法第84条にも反することになるので、それを主張するとともに、過去3年間の修正申告はしないが、今後は納税しますと交渉することです。

税務署は役所です。トラブルは困ります。今後納税してくれるのなら、過去は目をつぶろうとするかもしれません。そして、交渉が成立したなら、その担当官の名前、日時は最低メモして帰ることです。

なお、税務署との交渉は、ご自身でされるより税理士に依頼した方がいいです。



【NPO法人が障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスを行う場合の法人税の納税義務について】

【照会要旨】
 NPO法人A会(以下「A会」といいます。)は、特定非営利活動促進法により設立された特定非営利活動法人であり、法人税法上の公益法人等に該当します(法法2六、特定非営利活動促進法701)。
 今般、A会は、障害者総合支援法(注)に規定する障害福祉サービスを、利用者に対して提供することとしていますが、当該サービスはA会の本来の目的として行う事業であり、公益性を有するものであることから、法人税の納税義務はないと解してよいでしょうか。
 (注)障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律をいいます。

【回答要旨】
 原則、法人税法上の収益事業に該当し、法人税の納税義務があります。

(理由)

 法人税法上、公益法人等は、収益事業から生ずる所得以外の所得については、法人税を課さないこととされています(法法41)。ここにいう収益事業とは、法人税法施行令第5条第1項各号*1に掲げる34の事業をいいます。
 このため、その行う事業が公益法人等の本来の目的たる事業であるかどうかや会員等に対して利益の分配を行わない(非営利)といったことにより、収益事業に該当するかどうかの判断を行うものではありません。
 障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスは、障害者に対して介護等の提供を行う対人サービスであり、こうした障害者は医療保健面でのケアを必要とするのが通例であることから、医療と密接な連携がなされており、実際面において、これらは、個別支援計画の策定過程等を通じて確保されますので、このような特徴を有する障害福祉サービスは、原則として収益事業である「医療保健業」に該当します(法令51二十九)。他方、就労移行支援に代表されるように、看護師の関与も求められていないものについては、必ずしも「医療保健業」とは言えないのではないかと考える向きもあるようです。この点、基本的には上述のとおり、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスは「医療保健業」に該当すると考えられますが、仮に、個別の事業者のサービス内容から見て、実態として医療や保健といった要素がないサービスを提供しているようなケースがあったとしても、障害者総合支援法の下で、事業者と利用者との間で利用契約を締結し、利用者からそのサービスの対価を受領することになりますので、そうした契約関係等を踏まえれば、法人税法施行令第5条第1項第10号に規定する収益事業である「請負業(事務処理の委託を受ける業を含む。)」に該当します。
 したがって、NPO法人が行う障害者総合支援法に規定する障害福祉サービスは通常、医療保健業か請負業のいずれかに該当し、法人税の納税義務があります。
 ただし、NPO法人が提供する障害福祉サービスが、実費弁償方式(1個々の契約ごとにその都度実費精算が行われるもの、2ごく短期間に実費精算が行われるもの、3手数料等の額が法令により実費弁償の範囲内で定められ、仮に剰余金が生じた場合には手数料を減額する等の適正な是正措置を講ずることになっているもの)により行われるもので、あらかじめそのことについて税務署長の確認を受けた場合については、収益事業としないものとされ(法人税基本通達15-1-28)、また、その障害福祉サービスに従事する者の半数以上が身体障害者等であり、かつそのサービスが身体障害者等の生活の保護に寄与している場合については、収益事業に含まれないものとされますので(法令52二)、いずれかの場合に該当するときには法人税の納税義務はありません。
 なお、法人税の額は、各事業年度の所得の金額を課税標準として、その所得の金額に税率を乗じて計算する仕組みとなっていますので、公益法人等が納税義務者として、法人税の申告をする場合であっても、収益事業から生じた所得がない(例えば赤字)場合には、納付する法人税額は生じません。


【厚生労働省から各自治体の障害保健福祉担当宛への事務連絡】

事務連絡


【収益事業開始届出書】
収益事業開始届出書

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就労支援事業非課税と認定
http://miyazawa-kaikei.com/press/zeikin/post-401.html

動画:「サイレント・レストラン」従業員の半数以上が聴力障害者 北京
http://www.afpbb.com/articles/-/3174787