有料老人ホーム 入居一時金、訴訟の火種

こんにちは。介護専門税理士の松本昌晴です。

日本経済新聞2013.1.14

有料老人ホームの入居一時金の返還について、新たな訴訟リスクが指摘されているという記事がありました。

2014年4月施行の改正老人福祉法では、入居から3ヵ月以内に退去した場合、実費を除く入居一時金全額の返還を事業者に義務付けました。

しかし、3ヵ月を過ぎると一般に事業者は入居金の3割程度を初期償却し、返還額が大きく目減りします。残りの7割は平均5~7年で償却することになります。そして、この残額が返還額になります。

事業者の中には、初期償却分の割合を高く設定して返還額を少なくしているところもあると記事に書いてありました。

このような状況から東京都は法改正に先駆けて2011年11月に指導指針を改正しています。返還の対象にならない初期償却は望ましくないとしています。

業界の意見としては、「償却期間が終わった後に備えた家賃」「初期償却の割合をわざと高くしている一部業者に限るべきだ」との声があります。

「事業者は訴訟リスクを減らすためにも、利用者が納得する料金体系に変えていく必要があるだろう」と締めくくっています。

参考資料

改正後の老人福祉法第29条第8項

有料老人ホームの設置者は、前項に規定する前払金を受領する場合においては、当該有料老人ホームに入居した日から厚生労働省令で定める一定の期間を経過する日までの間に、当該入居及び介護等の供与につき契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した場合に当該前払金の額から厚生労働省令で定める方法により算定される額を控除した額に相当する額を返還する旨の契約を締結しなければならない。

改正後の老人福祉法施行規則第21条

 (家賃等の前払金の返還方法)
第二十一条 法第二十九条第八項の厚生労働省令で定める一定の期間は、次に掲げるものとする。
一 入居者の入居後、三月が経過するまでの間に契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した場合にあつては、三月
二 入居者の入居後、一時金の算定の基礎として想定した入居者が入居する期間が経過するまでの間に契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した場合(前号の場合を除く。)にあつては、当該期間
2 法第二十九条第八項の厚生労働省令で定める方法は、次に掲げるものとする。
一 前項第一号に掲げる場合にあつては、法第二十九条第七項の家賃その他第二十条の九に規定する費用(次号において「家賃等」という。)の月額を三十で除した額に、入居の日から起算して契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した日までの日数を乗ずる方法
二 前項第二号に掲げる場合にあつては、契約が解除され、又は入居者の死亡により終了した日以降の期間につき日割計算により算出した家賃等の金額を、一時金の額から控除する方法

具体的な返還金の算定方法

  1. 入居者の入居後、3月が経過するまでの間に契約が終了した場合
    返還金=(家賃の前払金の額)-(1ヶ月分の家賃の額)÷30×(入居の日から起算して契約終了日までの日数)
  2. 入居者の入居後、3月が経過し、想定居住期間が経過するまでの間に契約が終了した場合
    返還金=契約終了日以降、想定居住期間が経過するまでの期間につき、日割計算により算出した家賃の額

東京都有料老人ホーム設置運営指導指針

http://www.coj.gr.jp/iken/pdf/topic_111129_01_02.pdf


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