特別養護老人ホームの内部留保「過大」

こんにちは。介護専門税理士の松本昌晴です。

社会福祉法人の財務諸表の公開義務を検討

5月20日のブログでも書きましたが、いま特別養護老人ホームを経営する社会福祉法人の内部留保が注目されています。

5月20日のブログの内容は次の通りです。

社会福祉法人は内部留保をため込んでいると言われていますが、財務諸表を公開する義務がないので実態が分かりません。

政府の調査によると、全国で6000施設ある特別養護老人ホームの内部留保が全体で2兆円に上ると推計されるなど、福祉施設を運営する社会福祉法人の経営の不透明性が問題となっています。

そこで、2013年度分以降については、実質的に公開が義務付けられるよう今年12月までに具体策が検討されることになっています。

多額の税金や保険料が有効に使われているのか、今後、厳しく問われることになります。

特別養護老人ホームの内部留保

日本経済新聞(2013年5月22日)に、特別養護老人ホームの内部留保につての記事が掲載されていました。

そこで、「第7回社会保障審議会介護給付費分科会介護事業経営調査委員会」の資料にある「資料3 特別養護老人ホームの内部留保について」と併せて、特別養護老人ホームの内部留保についてご説明します。

日本経済新聞(2013年5月22日)より

厚生労働省は、21日公表した委託調査による2011年末時点で平均約3億1千万円で、また総額では2兆円規模。過大な内部留保を福祉サービス拡充や職員の待遇改善に活用すべきだとの指摘はやまない。厚生労働省が2015年度に予定する介護保険制度改革の論点になりそうだ。

特別養護老人ホーム等の内部留保額

特別養護老人ホームの側からは

  1. 「多くが土地や建物など固定資産に投入され現預金として積み立てていない」
  2. 「建て替えに備えた資金が必要」
    などの異論や不満も多い。

そこで厚生労働省は現預金を主とする「実在内部留保」を新たに定義しました。

実在内部留保
介護給付費分科会-介護事業経営調査委員会第7回(H25.5.21) 資料3より

発生源内部留保は1施設あたり平均で3億1373万円ですが、実在内部留保では1施設あたり平均1億5563万円となります。

特別養護老人ホーム等の内部留保額     (単位:千円)
特別養護老人ホーム等の内部留保額
介護給付費分科会-介護事業経営調査委員会第7回(H25.5.21) 資料3より

厚生労働省は医療や介護、生活支援などのサービスを地域で一体提供する「地域包括ケアシステム」を、団塊の世代が75歳以上になる2025年までに実現する方針。

そのサービス提供の担い手の一つに特別養護老人ホームなどのを経営する社会福祉法人を位置付けるが、特別養護老人ホームや社会福祉法人への厳しい批判は見過ごせない。

「要警戒水準」の社会福祉法人も存在

社会福祉法人が内部留保をため込んでいるという批判がある一方で、経営状態が悪い社会福祉法人もあるようです。

2011年4月5日の日本経済新聞の夕刊に、「社会福祉法人 再編へ新制度」という記事があります。

この新制度は東京都が11の指標で財務内容を点検し、基準に達しない経営状態が悪い法人に合併や事業譲渡を促すものです。

経営基盤の弱さを理由に利用者へのサービスを悪化させたり停止したりすることを防ぐ狙いがあります。

新制度では東京都が自己資本の割合を示す「純資産比率」など11指標に基づき経営状態をチェックします。

このうち1つでも東京都の定める基準に抵触すると「要警戒水準」と位置付けられます。

東京都によると、都内の施設を持つ社会福祉法人約700法人のうち2008年決算ベースでは約50法人が「要警戒水準」でした。


社会福祉法人は二極化?

以上から、社会福祉法人の経営実態は内部留保をため込んでいるところと、経営状態が悪化しているところに二極化されているように思われます。




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