NHKニュース「訪問介護先の高齢者閉じ込め」

こんにちは。介護専門税理士の松本昌晴です。

NHKニュースより

訪問介護サービスを行っているケアマネージャーとヘルパーが、神戸市に住む高齢者夫婦の自宅に外からチェーンの鍵などをかけ、外出できないようにしていたことがわかりました。

訪問介護先の高齢夫婦閉じ込める

神戸市は、2人が所属する「セントケア北六甲」と「あじさいのもり神戸」を、それぞれ6か月間の事実上の営業停止処分としました。

処分

神戸市によりますとこの2つの事業所は、市内に住む90代の男性と80代の女性の夫婦の訪問介護を担当していましたが、去年8月、「セントケア北六甲」の30代の女性ケアマネージャーが、夫婦の自宅の玄関のドアを外からひもでくくりつけ、外出できないようにしたということです。
その後、夫がドアの隙間から包丁でひもを切ったため、今度は、「あじさいのもり神戸」の40代の女性ヘルパーがチェーンの鍵をかけ、4か月にわたって夫婦を閉じ込めていたということです。

施錠

神戸市が事情を聴いたところ2つの事業所は、「外を出歩くと転倒したり事故にあったりする可能性が高かったためだ」と説明しました。


神戸市の記者発表資料より

神戸市が記者発表資料として提供(平成25年6月3日)した情報によりますと、処分等の内容は次の通りです。

処分を行う事業所の概要

居宅介護支援事業所

名称所在地運営法人当初指定年月日利用者数
セントケア北六甲神戸市北区唐櫃台2丁目23番2号富士ビル1Fセントケア西日本株式会社(法人所在地:神戸市中央区多聞通二丁目4番4号 代表取締役社長:大町 恵三)平成19年4月1日(直近更新年月日:平成25年4月1日)83名(平成25年5月24日現在)

訪問介護事業所

名称所在地運営法人当初指定年月日利用者数
あじさいのもり神戸神戸市北区東有野台1丁目18-1株式会社日本エルダリーケアサービス(法人所在地:東京都港区芝公園三丁目4番30号32芝公園ビル7F 代表取締役社長:森 薫)平成16年10月15日(直近更新年月日:平成22年10月15日)35名(要支援者含む)(平成25年5月24日現在)

処分の内容

上記の2事業者について、指定の全部効力停止(6カ月間)

※指定の全部効力停止処分により、上記2事業者は、6カ月間、利用者に対して介護保険法に基づく介護サービスを提供すること及び介護報酬の請求ができなくなる。新しい利用者を受け入れることもできない。

なお、上記2事業所の現在の利用者の方は、効力停止期間中は、他の介護サービス事業者から介護サービスを受けていただくことになる。

処分開始年月日

平成25年8月1日(木曜)(事業所への通知は平成25年6月3日)

認定事実

  1. 利用者本人又は家族等の了解をとらない等手順を経ていない行動制限(身体拘束)=利用者に対する虐待
    平成24年8月10日頃から、当該居宅介護支援事業所の管理者兼ケアマネジャーが、利用者宅の玄関をひもで括り、出られないようにしていた。
    そのひもを本人が自力で切ったため、8月21日からバイク用のチェーンで外側から施錠していた。
    当該訪問介護事業所は、当該利用者にサービスを提供していたが、この施錠の件については管理者及びサービス提供ヘルパーが知っており、チェーンを外してサービスを提供し、提供を終えたら再びチェーンをかけていた。
    施錠するにあたって、両事業所とも本人や本人家族等の了解は得ておらず、また、当該ケアマネジャーは、併設の地域包括支援センター(有馬あんしんすこやかセンター)等に相談をしていなかった。
    チェーンの鍵は、当該ケアマネジャーと、当該訪問介護事業所のサービス提供ヘルパーが保管していた。
    これは、手順を経ていない行動制限(身体拘束)であり、虐待である。
    なお、この事案により、当該利用者への身体的被害は発生していない。
  2. 虐待事例の神戸市への報告義務違反
    当該事例が虐待であるにもかかわらず、両事業所とも神戸市への報告を行っていなかった。
  3. 高齢者虐待防止に係る研修の実施が不十分であったこと
    高齢者虐待防止・身体拘束廃止について両事業所とも事業所内で研修が行われていたものの、研修内容に沿った行動・サービス提供を実施できていなかった。
    当該ケアマネジャーは当該居宅介護支援事業所の管理者であり、また、当該訪問介護事業所の管理者は今回の件について了知していながら看過していた。
    両事業所の管理者とも、事業所運営の一環として研修を主宰すべき立場の者であるにもかかわらず、研修の趣旨を理解できていたとは言えない。 .

根拠法令

  1. 居宅介護支援事業所:介護保険法第84条第1項第4号(同法第81条第5項(要介護者に対する人格尊重義務)違反)
  2. 訪問介護事業所:介護保険法第77条第1項第5号(同法第74条第6項(要介護者に対する人格尊重義務)違反)

これまでの経緯

平成24年11月27日 当該利用者の知人を名乗る人物よりの当該利用者に会えないという苦情に基づき、介護指導課職員がケアマネジャーに連絡をとったところ、施錠の事実が発覚

平成24年11月28日 北神保健福祉課あんしんすこやか係が現地訪問・確認(写真撮影)、鍵を外すよう指導・開錠

平成24年11月29日~介護保険法・高齢者虐待防止法に基づく監査・事情聴取及び立入検査(以降、処分決定まで18回にわたり現地調査及びヒアリングを実施)

平成25年5月17日・22日 事業者に対し行政手続法に基づく聴聞を実施

参 考

  1. ケアマネジャー(介護支援専門員)
    「要介護(1~5)」の認定を受け、介護保険を利用したいと考える高齢者(利用者)やその家族からの相談を受け、ケアプラン(居宅サービス計画)を作成し、介護サービスを行う事業者や利用者のかかりつけ医等と連携や調整を行い、介護が総合的に行われるためのまとめ役を担う。
    看護師、社会福祉士、介護福祉士など一定の実務経験のある資格者などが介護保険法に基づく試験に合格し、所定の研修を修了して従事している。
    介護支援専門員の登録は都道府県の所管事務である。
    ケアマネジャーの業務は、介護保険法に基づく指定を受けた居宅介護支援事業所(神戸市における愛称「えがおの窓口」)に勤務しているケアマネジャーが行う。
  2. 訪問介護(ホームヘルプサービス)
    介護保険法に基づく居宅サービスのひとつで、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、入浴・食事・排せつの介助などの「身体介護」、調理・洗濯・掃除などの「生活援助」、通院等の際にヘルパーが車を運転して乗降車の介助や準備等を行う「通院等乗降介助」を行う。
    ホームヘルパーの資格は、民間機関が実施している講座・研修等を受講して取得する民間資格である。
    訪問介護(ホームヘルプサービス)は、居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成したケアプランに沿って、介護保険法に基づく指定を受けた訪問介護事業所が、利用者に提供する。




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