役員に処遇改善加算を支給するときの注意点

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介護専門税理士の松本昌晴です

「役員に処遇改善加算を支給できますか?」という、ご質問があり
ます。

そこで今回は、このご質問にお答えしたいと思います。

結論は、処遇改善加算の支給対象と法人税法の役員報酬の定期同額給与を充たすようにしなければなりません。

つまり、役員に処遇改善加算を支給するとき
①支給対象の解釈(ローカルルールがある)
②法人税の定期同額給与(同額でなくなる)

の両方を検討する必要があります。

処遇改善加算の支給対象の解釈

まず、役員に処遇改善加算を支給することについて、厚生労働省は次の回答をしています。

役員に処遇改善加算を支給

すなわち、「賃金改善分を労働基準法上の賃金で支給するのであれば対象としてよい。」とし、役員に処遇改善加算を支給することについて、一定の条件のもとで認めています。

しかし、実際の運用にあたっては、ローカルルールがあり自治体によって微妙に扱いが違います。

ローカルルールについては、下記のサイトをご覧ください。
http://kaigokeiei.net/index.php?%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%81%A8%E3%81%AF

大阪市の扱い

まず、大阪市のHPのトップ画面から、「処遇改善加算 役員」で検索すると下記の検索結果が表示されます。

処遇改善加算

次に「介護職員処遇改善加算に関する留意事項」をクリックすると、役員に処遇改善加算を支給するときの留意事項が記載されています。

なお「Ctrlキー+F」で、「役員」のキーワードを入力すると、「役員」と記載されているところが表示されます。

情報量が多い場合は、非常に助かりますので試してみてください。

役員の処遇改善加算

上記の通り、厚生労働省の回答とほぼ同じ内容です。

他の自治体の扱い

私が調べた限りでは、役員に処遇改善加算を支給することについて、一定の条件のもとで認めています。

ただし、自治体によって
・代表取締役等への支給は、認めていない。
・ハローワークに兼務役員の届出を要求している。
・役員報酬の支給を受けている者は対象外にしている。
など、様々です。

例えば、代表取締役等を処遇改善加算の対象から除外している自治体をネットで検索しました。他にもあると思います。

福岡県介護保険広域連合

「処遇改善加算については従業員に対する給与支給による処遇改善目的に用途が限定されるため事業主である法人代表へはいかなる場合でも支給対象外です。」
https://www.fukuoka-kaigo.jp/files/NewsDetail/7/NewsDetail_7125_file_62fdc865d49f4.pdf

島根県

「法人代表者(代表取締役、代表社員、代表理事 等)は非対象」
https://www.pref.shimane.lg.jp/medical/fukushi/syougai/jigyousya/syougai_service/03syuudannsidou.data/03shuudannshidou.pdf?site=sp

宮城県

「法人代表者 (代表取締役,代表社員,代表理事等)は対象となりません。」
https://www.pref.miyagi.jp/documents/7258/0400ver2.pdf

和歌山県

「使用人兼務役員になれないケース
・代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
・副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
・合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
・取締役(委員会設置会社の取締役に限る)、会計参与及び監査役並びに監事
・同族会社の使用人のうち税務上みなし役員とされる者」
https://wave.pref.wakayama.lg.jp/kaigodenet/careprov/syuudansidou/R3/kyoutsuu/04%20syoguukaizen.pdf

など。

この様に、自治体によって様々な扱いをしていますので、皆さんの事業所を管轄している自治体が、どの様な扱いをしているかをネットで検索して調べてください。

または、ネットで確認できないときは、直接自治体に確認して下さい。そのとき、確認した内容をメモするとともに、確認した日時、回答した担当者の氏名などもメモに残してください。

まとめ(大阪市の場合)

もう一度、大阪市の「介護職員処遇改善加算に関する留意事項」から、役員の処遇改善加算について記載された箇所を下記に表示しています。

大阪市の処遇改善加算の留意事項

大阪市の場合、法人の役員であっても次の3つの条件を満たすとき、処遇改善加算の対象者とすることを認めています。

  1. 介護職員の業務に従事している実績があること。
  2. その実績の対価として支給されている金銭が役員報酬ではなく「給与」として支払われていること。
  3. 勤務表、雇用契約書等において、上記1及び2の要件を満たしていることが客観的に判断できること。

以上を踏まえ私見ではありますが、大阪市の場合について、役員に処遇改善加算を支給するときの注意点を次に記載しました。

  1. 代表取締役等には処遇改善加算は支給しない。
    大阪市の場合は、代表取締役等が処遇改善加算の支給対象外であると明記していませんが、

以上、大阪市の場合について私見を述べましたが、皆さんは自己責任でご判断ください。また、新たな情報が出てきて、時が経過するとともに古い情報になってしまうことがありますので、ご注意ください。


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