前職の事業所からご利用者を引き抜くことは問題ですか?
お答えします。
退職した元従業員が利用者を引き抜いて持って行くことは、引き抜かれた事業所としては大きな痛手です。
そのため引き抜いた従業員とトラブルになることがあります。
介護保険の理念は、ご利用者がどこの介護事業所を選択するかは自由であり、それを制約することはあってはならないとしています。
したがって、ご利用者の意思で退職した従業員の事業所を選んだのであれば、引き抜かれた事業所としては仕方ありません。
引き抜いた従業員の対応
引き抜いた従業員としては、利用者の意思だからという主張をすればいいことですが、次の点には注意すべきです。
- 前職の勤務中に強引な勧誘はしないこと。
- 利用者の個人情報は持ち出さないこと。
- 利用者に退職を伝えて、連絡先を聞かれたら伝える程度に抑えておく。
- 退職後数ヶ月してから、利用者を引き継ぐ。
などです。
強引な利用者の引き抜きは前職の事業所に恨みをかい、介護業界は狭い世界なので、悪いうわさはすぐ伝わります。
道義上の問題もありますので、できるだけ穏便にすることです。
介護事業を開業すると逆の立場なる
利用者を引き抜いて介護事業を立ち上げた場合、今度は逆の立場になります。
採用した従業員が利用者を引き抜いて、退職するということが起きてしまいます。
そこで、
ご利用者さんがAさんを選択するか甲社を選択するかは、ご利用者の自由であって、それを制約することは介護保険の理念に反することになります。
従って、ご利用者がAさんを自分の意思で選択したのなら、誰も止める権利はありません。
恐らく甲社も分かっているはずですが、
- 弁護士から内容証明書が届くと、ビビッてご利用者の引き抜きを止めるのではないか?あるいは、
- 今いる従業員に圧力をかけるため、ご利用者を引き抜くと大変なことになると見せしめ
という目的で強行手段に出るかもしれません。
Aさんの適切な対応方法
Aさんには黙っていても、ご利用者はついてくるので、あえて勧誘することなく、退職の意思表示程度にとどめておくのが無難です。
甲社のご利用者情報を持ち出したり、あからさまなご利用者の勧誘は避けるべきです。
退職の意思表示をご利用者に伝えたら、引き続きAさんにサービスを受けたい人は、連絡先を聞かれるはずです。
聞かれたら、伝えたらいいことです。
開業後数ヶ月してから、引き継ぐぐらいでいいのではないでしょうか?
甲社の適切な対応方法
甲社は大手の有名な会社なので、表沙汰になると世間の評判にも影響しますので、できるだけ穏便にしなければなりません。
この様な問題が起こらないようにするためには、
- 常日頃、一人のヘルパーだけではなく複数で対応する。
- 引き継ぎ時に、今までと同じように十分な対応をするので、継続して利用する様にお願いする。人はお願いされると、断りづらいものです。
- 強引な勧誘があったかどうか、ご利用者に聞き取り調査をする。もしあれば、法的手段をとるか検討する。
- 就業規則で、ご利用者の情報を使用することを禁止する条文を規定する。
などの対策が考えられます。