消費税率8%引上げに合わせて、介護報酬の一部改定
こんにちは。介護専門税理士の松本昌晴です。
消費税率が来年4月に5%から8%に引上げられることにより、介護サービス施設・事業所の仕入れ等にかかる消費税負担が増大します。
そこで、引上げに伴う影響分を補填するため、介護報酬への上乗せ対応を行うべきではないかという議論がなされてきました。
そして、厚生労働省は7月19日に消費税率8%引上げ時の対応について、社会保障審議会介護給付費分科会の介護事業経営調査委員会に提示しました。
介護事業経営調査委員会は、次の通り了承し介護給付費分科会に報告される予定です。
介護給付費分科会で了承されると、来年4月に予定されている消費税率8%引上げに合わせて、介護報酬の一部が改定されます。
介護事業経営調査委員会が了承した内容
介護事業経営調査委員会が了承した内容 は、次の通りです。
- 介護報酬とは別建ての高額投資対応については、消費税率8%へ の引上げ時には実施しないこと。
- 消費税対応分の手当方法については、基本単位数及び消費税負担が相当程度見込まれる加算単位数へ上乗せる。
介護報酬にかかる対応案
次の2つの対応案が提案されましたが、対応案1(介護報酬上乗せ対応)が了承されました。
- 対応案1(介護報酬上乗せ対応)
- 対応案2(介護報酬上乗せ対応+高額投資への別建て対応)
各対応案のメリット・デメリット(対応案1)
介護報酬上乗せ対応(対応案2)
介護報酬上乗せ対応+高額投資への別建て対応メリット ○ 通常の仕入れ等にかかる消費税負担について、税率引上げに伴う影響分に対し手当を行うことにより、既存のシステムで対応が可能。 ○ 高額な設備投資の多い施設・事業所については、一定程度、負担感が緩和される(ただし、手当の対象は基本的に税率引上げ部分(3%分)となると考えられる)。 デメリット ● 高額な設備投資への配慮には限界がある。 ● 実施機関、保険者等において、新たにシステム対応が必要となることについて理解が得られるか。
介護報酬上乗せの具体的な対応方法
次の3つの案が提案されましたが、案1-2 〔基本単位数+特定の加算〕が了承されました。
- 案1-1 〔基本単位数〕
- 案1-2 〔基本単位数+特定の加算〕
- 案2 〔1単位単価〕
各案のメリット・デメリット
案1-1 〔基本単位数〕 | 案1-2 〔基本単位数+特定の加算〕 | 案2 〔1単位単価〕 | |
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考え方 | ・基本単位数に消費税対応分を上乗せ | ・基本単位数に加え、消費税負担が相当程度見込まれる加算単位数にも上乗せ | ・1単位単価に消費税対応分を上乗せ |
メリット | ○仕組みが単純で分かりやすい | ○消費税負担の実態により配慮した手当ができる | ○今回の消費税対応分が明確で分かりやすくなる |
デメリット | ●同一サービスにおいては、全ての施設・事業所に一律に手当される | ●仕組みが複雑になり分かりにくい ●加算によっては、上乗せ分が1単位を下回ることもあり、実質的に対応できない場合がある | ●全ての施設・事業所に一律に手当される |
消費税対応に関する検討スケジュール(案)
7月
・ 「介護サービス施設・事業所の設備投資に関する調査結果」の報告
・ 論点整理
秋ごろ
・ 基本方針のとりまとめ
年内目途
・ 「介護事業経営概況調査結果」の報告
・ 8%引上げ時の対応
10%引上げ時の対応については、引き続き検討
消費税の取扱い
病院を介護事業所、社会保険診療報酬を介護給付費、患者を利用者と読み替えてください。
たとえば、デイサービスが食材等の仕入れとして1,050(うち、50が消費税)、介護給付費が3,000であったと仮定して、来年4月に消費税率が5%から8%に上がった場合、食材等の仕入れは1,080(うち、消費税80)と30増えますが、介護給付費は非課税なので増えません。
実質、消費税が上がることにより、今より30負担が増えることになります。
この対応策として、今回、介護事業経営調査委員会は基本単位数及び消費税負担が相当程度見込まれる加算単位数へ上乗せる方法を了承しました。
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