リーダーシップと要支援事業の成否
左の本「採用基準」は、ある雑誌に紹介されていたもので、なんとなく購入して読んでみました。
この本は介護保険について書かれたものではありませんが、読んでいると要支援者を市町村に移行して、うまくいくだろうかと疑問に思いようになりました。
なぜなら、「互助」が機能するためにはリーダーシップの存在が不可欠で、リーダーシップが不足している日本では難しいのではないかと思うからです。
「採用基準」の著者伊賀泰代氏は、外資系コンサルタント会社で採用業務を担当していたころの経験を基にして書かれています。
日本人はリーダーシップのある人数が圧倒的に少なく、それが経済や社会に大きな影響を与えるとして、今後リーダーシップのある人材を育成しなければならないと主張されています。
また、リーダーシップとは例えば、坂本龍馬のようなカリスマ的なリーダーを思い浮かべますが、そうではなく「自分がこの現状を変えていく」という意識を持ち行動できる人がリーダーで、日本には絶対的に不足していると結論づけています。
昔は、町内会長などリーダーとなる存在がいましたが、今は少なくなると同時に伝統的な互助のコミュニティが崩壊しています。
新たなコミュニティを立ち上げるためには、誰かが互助の仕組みをゼロから設計し、人を集め、運営が始まってからもさまざまに生じる問題の解決に、リーダーシップを発揮する必要があります。
そして、多くの人がリーダーシップを発揮して互助のシステムが増えれば、財政負担を抑えることができます。
このリーダーシップの発揮が期待されるのが、コーディネーターという新たな資格です。
また、市町村の役人にもリーダーシップが求められますが、著者の伊賀氏は日本人にはリーダーシップを持っている人が少ないとしています。
以上のように、リーダーシップを持っている人が少ない状況では、ボランテイアなどを集め、運営していけるリーダーは少なく、その結果、要支援事業は多くの市町村で失敗する可能性があります。
この本を読み進めると、突然「自助、共助、公助」という言葉が出てきます。
今回の介護保険法改正にお詳しい方は、「自助、互助、共助、公助」という言葉をご存知だと思います。
すなわち
- 「自助」とは
本人の所得や資産からお金を払って、サービスの提供を受けようとするものです。いわゆる自費サービスに該当します。 - 「互助」とは
家族や近隣、あるいはボランティアの助けを借りて、サービスの提供してもらおうとするものです。 - 「共助」
介護保険制度のように、みんなで保険料負担してみんなで助け合おうとするものです。 - 「公助」とは
「自助」「互助」「共助」で、サービスの提供が受けられない人のため、行政が社会福祉、社会扶助として行うものです。たとえば、生活保護などがあります。
著者は、介護保険のことについて一言も触れていませんが、要支援事業の将来を占うことのできる内容になっていると思います。
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