現行の介護報酬体系の問題点とインセンティブ導入の必要性
こんにちは。大阪の介護専門税理士の松本昌晴です。
介護事業者の自立支援に向けた取組により利用者の状態改善等が行われ、そのアウトカム評価によって介護事業者にインセンティブを与えるべきであるという意見が、今回の介護報酬改定の議論の出発点になっています。
その出発点になった意見が、平成28年11月10日に開催された未来投資会議において発言された次の翁百合氏の発言です。
さらに国際医療福祉大学教授の竹内孝仁氏の「要介護状態になった人の半数を自立状態に戻すことは可能である」という次の発言は、自立支援を促進したい厚生労働省にとって援護射撃になっています。
現行の介護報酬体系の問題点
現行の介護報酬の体系は、介護保険の利用者が1割又は2割の自己負担で利用できる1ヶ月の上限金額(区分支給限度基準額)が決まっており、要介護度が上がるほど増えるようになっています。
- 要介護1 166,920円
- 要介護2 196,160円
- 要介護3 269,310円
- 要介護4 308,060円
- 要介護5 360,650円
(注)限度額は、介護報酬の1単位を10円として計算しています。
介護保険の利用者は、区分支給限度基準額を超えると超えた部分が全額自己負担になるため、その限度内で抑えようとします。
また、その限度内であれば1割又は2割の負担が増えても、介護保険を利用することに抵抗感は少ないです。
そのため、介護事業者の事業所の収入は、要介護度が悪化するほど、かつ区分支給限度基準額をいっぱい使ってもらうほど増えるということになります。
インセンティブ導入の必要性
この様なことから現行の報酬体系は、利用者の状態を改善しようとするインセンティブが働かず、それどころか過剰なサービスを提供しやすい傾向にあります。
このことは、介護給付費の増加をまねき、今後、高齢者が増えてくれば国の社会保障費が膨張し、社会保障制度を崩壊させることにもなります。
そこで今回の介護報酬改定ではインセンティブを導入し、利用者の状態改善などによって報酬を上げるような仕組みが議論されています。
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