NPO法人会計基準の特徴
NPO法人会計基準の特徴は、次の8点に集約することができます。
- 発生主義を原則とし、複式簿記を前提としていること
- 財務諸表の体系を収支計算書から活動計算書へ変更したこと
- 重要性の原則を幅広く駆使し、小規模法人への対応を最大限考慮したこと
- 無償または著しく低い価格での施設の提供を会計に取り込んだこと
- ボランティアによる役務の提供を会計に取り込んだこと
- 使途が制約された寄付金等の会計処理を定めたこと
- 助成金、補助金の会計処理を定めたこと
- 経常費用の区分を明らかにしたこと
発生主義を原則とし、複式簿記を前提としていること
現金主義による収支計算を改めて、一般の企業で採用されている発生主義による複式簿記を前提とした会計をNPO法人でも導入されました。
これによって分かりやすい財務諸表ができるようになりました。
財務諸表の体系を収支計算書から活動計算書へ変更したこと
NPO法人がミッションを達成するために行った活動やその結果を表す「活動計算書」は、NPO法人の活動の実態をより分かりやすく示し、NPO法人と市民をつなぐ架け橋となります。
重要性の原則を幅広く駆使し、小規模法人への対応を最大限考慮したこと
NPO法人は小規模な法人が多いため、重要でないものまでも厳格な会計処理を求めると大きな負担となります。
そこで重要な事項は厳密な会計処理を要求しますが、重要でないものは簡便な会計処理でも良いとする「重要性の原則」を採用しています。
無償または著しく低い価格での施設の提供を会計に取り込んだこと
無償または著しく低い価格での施設の提供を受けた場合には、NPO法人の真実のコ
ストを表示することや援助を受取ったという事実を表示するため、次のいずれかの方法で財務諸表に計上します。
- 財務諸表の注記だけに記載し、活動計算書には計上しない
「提供を受けた部分の金額を合理的(※1)に算定できる」ことを条件としています。 - 活動計算書に計上する
金銭で寄付を受取ったのと同レベルの「提供を受けた部分の金額を外部資料等により客観的(※2)に把握できる」ことを条件としています。
※1「合理的」とは
金額評価の根拠について十分説明可能な程度の水準にあることを指します。
※2「客観的」とは
誰でも入手できる具体的な外部資料が存在することを指します。
ボランティアによる役務の提供を会計に取り込んだこと
ボランティアの労力を金額評価しないことについは、次の2つの問題が挙げられています。
- NPO法人の真の活動規模が過小評価される。
- 人件費が計上される営利法人とNPO法人を比較できない。
そこでその問題を解決するため、次のいずれかの方法を選択することにより情報開示をすることになっています。
- 財務諸表の注記だけに記載し、活動計算書には計上しない。
「活動の原価の算定に必要なボランティアによる役務の提供を受けた場合で、提供を受けた部分の金額を合理的に算定(※)できる」ことを条件としています。 - 活動計算書に計上する。
「活動の原価の算定に必要なボランティアによる役務の提供を受けた場合で、提供を受けた部分の金額を外部資料等により客観的に把握できる」ことを条件としています。
※「合理的に算定できる」とは
例えば、厚生労働省が公表している最低賃金(地域別最低賃金の全国一覧)に提供されたサービスの時間を乗じて計算する方法が考えられます。
使途が制約された寄付金等の会計処理を定めたこと
NPO法人に対する資金援助の中には、例えば「〇〇の目的のために使って欲しい」というように、使途に制約のある寄付金等があります。
この様な寄付金等を受領した年度で収益に計上し、その寄付の使途にしたがって翌年以降に使用した場合、受領年度の寄付金等の収益はNPO法人の自由になるお金ではないので、誤解を与えないため原則として財務諸表の注記に次のように記載します。
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なお、重要性が高い場合は
- 貸借対照表の正味財産の部を指定正味財産と一般正味財産に区分するとともに、
- 活動計算書にも指定正味財産増減計算の部と一般正味財産増減計算の部の区分を設け、
それぞれの動きを表示することとしています。
助成金、補助金の会計処理を定めたこと
助成金や補助金については、NPO法人の会計年度によって助成金等をもらった年度とその助成対象事業の終了年度が異なる場合
- 対象となる助成金等について未使用額の返還義務が課されている場合には、未使用額を負債(前受助成金等)として計上することとしています
- 逆に後払いの助成金等については、対象事業の実施に伴って当期に計上した費用に対応する金額を、未収助成金等として当期の収益に計上することとしています。
経常費用の区分を明らかにしたこと
まず事業費と管理費に区分するとともに、それぞれについてさらに人件費とその他経費に区分します。この場合、事業費と管理費に共通的に発生する費用については、合理的な基準を用いて按分することを原則としています
複数事業の事業別開示については、法人の任意とし、記載方法も注記とすることとしています。
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