介護事業者のための労働法規
介護事業所の皆様方へ
介護事業者の皆さんは、介護保険法の遵守については神経を使っておられるのですが、労働法規となると知識不足なのか、あまり気にしておられない方が多いように思います。
しかし、平成24年の介護保険法の改正で労働法規を遵守せず、罰金刑を受けると指定を取り消されることになりました。
今後は介護事業者様は、介護保険法ばかりでなく労働法規についても知識を深めリスクに備えなければなりません。
そこで、今回、訪問介護事業所などの介護事業者様に必要な労働法規の知識として、知って頂きたい内容を記載しました。
社会福祉施設の労働基準法違反による送検事件状況
送検とは、犯罪者・犯罪容疑者、また捜査記録・証拠物件を警察から検察庁に送ることを言い、身柄と書類等を送る場合と、書類だけを送る場合とがあります。
社会福祉施設には、特養、老健、老人デイサービスセンター、老人短期入所施設、訪問介護事業所等の居宅サービス事業所、グループホーム、有料老人ホーム等のほか、保育所や障害福祉関係施設・事業所等が含まれています。
労働基準法等違反事業場比率(平成20年)
介護事業を含む社会福祉関係の事業は、下の表の通り全産業と比較して労働基準法等の違反の割合が高いです。
平成24年改正介護保険法
以上の介護事業所の状況を踏まえて、平成24年の改正介護保険法では次の条文が盛り込まれました。
次のいずれかに該当する者については、介護サービス事業者の指定等をしてはならないものとする。 ①労働に関する法律の規定であって政令で定めるものにより罰金刑に処せられ、その執行を終わるまでの者、又は執行を受けることがなくなるまでの者 ②労働保険の保険料の徴収等に関する法律により納付義務を負う保険料等の滞納処分を受け、引き続き滞納している者
都道府県知事又は市町村長は、指定地域密着型サービス事業者が上記①に該当するに至った場合には、指定の取消し等を行うことができるようになりました。
労働基準法に違反して、罰金刑以上になった者については指定を認めない、及び現にサービスを提供している事業者が罰金刑を受けたときは指定を取り消すというものです。
したがって、今後、改正介護保険法をきっかけに監督官庁の労働法規遵守に関する指導が増えるものと予想されます。
また、厚生労働省は2025年までに良い介護事業者を残し、それ以外は市場から退場してもらうため、労働法規を遵守しないような介護事業者には厳しい態度に出る可能性があります。
介護事業所の対応
労働法規を遵守していなかったからといって、即取り消しになることはありません。
取り消しになるのは、是正勧告を再三無視するなどの悪質なケースです。
したがって、過度に心配する必要はありませんが、もし賃金不払いなどの労働法規を遵守していない状況があれば、取り消しされる以前に介護従事者は辞めてしまい定着率の悪い事業所になってしまいます。
賃金不払いなどの背景には、経営者の無知もあるでしょうが、会社経営がうまくいっていないからかもしれません。
介護事業の経営者には、「儲ける」という考えがないか、「儲ける」ことは悪であるとか、「トントンであれば良い」など、全く営利企業の経営者としてふさわしくない人がいます。
二宮尊徳の言葉に「道徳なき経済は犯罪 経済なき道徳は寝言」があります。
賃金不払いなどをなくし労働法規を遵守するためにも、会社は利益を出さなければならないという覚悟で経営をしてください。
介護事業所が取り組むべき労務管理のポイント
社会福祉施設等については、労働基準法違反が指摘される割合が他の業種と比べて10ポイント程度高い、とも言われています。
社会福祉施設における労働基準法違反事業場比率
(特定の業種や調査内容に合った職場を選定して調査した結果としての“違反出現率”)
(資料) 厚生労働省「労働基準監督年報」
そこで、
- 労働条件の明示について
- 就業規則について
- 労働時間について
- 賃金等について
など、訪問介護事業所を中心に取組むべき労務管理のポイントを解説します。
訪問介護事業所以外でも共通する部分があります。
労働条件の明示について
就業規則について
労働時間について
賃金等について
その他
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