集合住宅減算の抜け道

こんにちは。大阪の介護専門税理士の松本昌晴です。

訪問系サービス(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、夜間対応型訪問介護)が、集合住宅(養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅)に居住する利用者にサービスを提供する場合、次に該当すると報酬が10%減算(集合住宅減算)されます。

  1. 事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内の集合住宅に居住する利用者に対して訪問する場合
  2. 事業所と同一敷地内以外又は隣接する敷地内以外の集合住宅に居住する利用者の人数が1月あたり20人以上の場合

【訪問介護の場合の集合住宅減算】
画像の説明
出典:平成27年3月3日全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料

なお、訪問系サービスを含めた集合住宅減算等は次の通りです。

集合住宅におけるサービス提供の場合の報酬

出典:第145回社会保障審議会介護給付費分科会資料

集合住宅減算の抜け道

区分支給限度基準額(1ヶ月利用者が1割又は2割の負担で利用できる限度額)に係る費用の算定に際しては、減算の単位数により判定されることになります。

すなわち、集合住宅減算が適用されると、報酬が減算された分だけ区分支給限度基準額の空が増えることになり、その空を使用することによって、介護事業者の報酬が増えることになります。

例えば、要介護5の人の区分支給限度基準額は、360,650円(1単位10円として計算)ですが、限度額いっぱい利用されている方がおられるとしましょう。

その方に集合住宅減算が適用され、その方にサービスを提供している訪問介護事業所の報酬が10%約36,000円減算になったとします。

その結果、現行では区分支給限度基準額に、36,000円分の余裕ができることになります。

その余裕のできた限度額に訪問介護事業所がサービスを提供すれば、人件費は多少増えますが、集合住宅減算によって減少した報酬を補うことができます。

集合住宅に係る減算が適用される者が、減算が適用されない者よりも多くの介護サービスを利用できる現状となっています。

集合住宅減算の抜け道を防ぐ対策

8月23日に開催された介護給付費分科会において、上記の問題が議論され、多くの委員から減算の単位数で区分支給限度基準額を計算する方法に改めるよう意見が出されました。

おそらく10月以降の介護給付費分科会で、厚生労働省は新たなルールを具体的に提示すると思われます。

集合住宅減算の抜け道を介護給付費分科会で事例として挙げられていますが、その結果多くの人が知ることになり、対策なしに放置すると抜け道が普及することにもなりますので、厚生労働省は必ず対策案を示すはずです。

もっとも一部の委員から重度の要介護者は、多数のサービス提供が必要となるので、要介護など利用者の状況をきめ細かく見る必要があるのではないかという意見を述べられている方もおられます。

なお、今回の対策は訪問系サービスだけが対象で、通所系は送迎が行われないことなどを考慮して対象外になります。

明日のブログでは、大阪府のサービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームの入居者は全国平均に比べ、区分支給限度基準額をいっぱい使っている人が多く、集合住宅減算によって空ができた分を利用している人も多いのではないか、ということを述べたいと思います。



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