【コラム】 半沢直樹に学ぶ「折れない心」

7月クールのドラマで、「半沢直樹」(TBS系)が絶好調だ。
初回の視聴率は19.4%(ビデオリサーチ、東京地区)。TBS系列の4月クールの平均が10.6%だったから、それだけでも好発進といえるのだが、この時は同クールのトップは他局の作品に譲った。しかし評判が評判を呼び、第2回以降は20%を超え、第4回は27.6%。瞬間最高視聴率でも30%に達し始めた。堺雅人さん演じる主人公の決め台詞「やられたら、倍返しだ!」が大人だけでなく、子供たちにも流行しているそうで、ドラマのヒットの行方によっては今年の流行語大賞の候補になりそうな勢いである。

会計士や税理士の皆さんも多くの方がご覧になっているだろうが、ドラマは関西が舞台。主人公の半沢は、大阪・梅田にある大手銀行支店の融資課長で、5億円の融資事故の責任をなすり付けて左遷を画策する支店長や、5億円をだまし取って計画倒産した製鉄会社社長らとの息詰まる攻防を描いている。「敵キャラ」の中には、片岡愛之助さんが本職の歌舞伎役者らしい大見得を切ってユニークに演じる国税局の幹部も登場。半沢が、行方を追いかけている製鉄会社社長は、国税局の脱税調査の対象にもなっており、半沢が、ハワイにある社長の土地を差し押さえようとしたところ、この幹部は、手続き中の銀行本店の担当者をあるネタで“脅迫”して中止させ、土地を押さえてしまう。専門家としては、ドラマに描かれたように、銀行と国税が財産の差し押さえを巡ってとことん競合するのは考えづらいと思いつつも、国税当局の強権的とも取られかねない動向については、日頃の税務調査対応の経験から「あるある」と頷く税理士も少なくないのではないだろうか。

すでに世のサラリーマンをターゲットにしている男性週刊誌の多くが特集記事を組んで、ドラマの魅力を解剖しているが、人気を呼ぶのは、決め台詞の「倍返し」にみられるカタルシスもあるだろう。さらに言えば、どんな苦境に追いやられても、それにめげずに目の前の壁を打開するため、知恵を振り絞る半沢の姿に共感しているからだと考える。第3回では、支店長たちが「罠」をかけたともいえる支店の内部検査で、半沢は追い詰められるが、半沢を信頼する部下たちのファインプレーもあって逆襲。「罠」を仕掛けた側の不正を逆に追求する「倍返し」に成功する。国税当局とのバトルは執筆時点では決着していないが、「悪く思わないでね」と嫌みを言う幹部にも半沢は大胆にもリベンジを誓うのだ。

リアルの世界に置き換えると、会計士のあなたも実地棚卸に企業側が非協力的な態度を見せたり、税理士のあなたもドラマ顔負けの税務調査の強引なツッコミに四苦八苦したりしていることだろう。半沢直樹の活躍ぶりに、日頃のストレスを忘れさせる爽快感を覚えつつ、主人公のひたむきな姿勢から学び取るものがないか目を凝らしてみたい。実際に「倍返しだ!」とは言えなくても…