基本報酬

介護報酬は基本報酬と加算の二層構造となっています。

基本報酬は、基本的なサービスの提供に係る費用ですので、サービスの質等に関係なく定められたサービスを定められた時間で提供することで請求出来る介護報酬です。

しかしながら、ただ単にサービスを提供すれば良いわけではなく、ケアマネジメントプロセスに基づいて、計画書、議事録、報告書等の記録を残すことが求められています。

この記録が無い場合はサービスの実施、ひいては介護報酬の請求の根拠を失うことになります。

ケアマネジメントプロセス

ケアマネジメントプロセスは、全ての介護サービスに共通する重要な概念です。

このプロセスを理解していない場合、介護報酬の基本報酬の算定要件や加算・減算等の規程が理解出来ません。

実地指導に於ける介護報酬の返還指導等も、その多くがケアマネジメントプロセスに従つていないことからのものです。

各サービスのケアマネジメントプロセスは解釈通知である老企25号および厚生省令37号等に記載されている通りです。

ケアマネジメントプロセス

① 要介護者の能力・環境の評価を通じて、抱えている問題を明らかにして、支援する上で解決すべき課題を分析・把握(アセスメント)します。

②総合的な援助方針、目標を設定するとともに、①に応じた介護サービス等を組み合わせて計画を策定します(プランニング)。

③ ①及び②について、事業所内のケアカンファレンス等により支援に関わる専門職間で検証・調整し、認識を共有した上で(多職種協働)、介護計画を策定します。

④介護計画に基づくサービスを実施するとともに、継続的に目標の達成状況、それぞれのサービスの実施状況や要介護高齢者の状況の変化等を把握(モニタリング)し、ケアの内容等の再評価・改善を図ります。

サービス提供の流れと請求

ここでは、訪問介護サービスを例にとってケアマネジメントプロセスと請求の関係をご説明します。

訪問介護をご自分のサービス名に読み替えて頂けると分かり易いです。

訪問介護事業所はアセスメントの後に、居宅介護支援事業所のケアマネージャーが作成する居宅サービス計画(以下、 ケアプラン)に基づき、訪問介護計画書をサービス提供責任者が作成し、利用者または家族に説明し同意を得ます。

同意の証としての署名または記名擦印によって記録され、控えを利用者または家族に交付します。

その後、 実際にサービスの提供を行います。

このプロセスの前後の入れ替えはありません。

サービス提供開始の後に、介護計画を作成して説明同意を得る、いわゆる事後同意などは認められないと言うことです。

すべての介護サービスは、介護計画書を作成して説明同意を得た後でないと実際のサービスに入ることが出来ません。

それは同時に、介護計画書を作成して説明同意を得る以前に提供された介護サービスは、介護報酬の請求が出来ないという事になります。

個別の居宅サービス計画作成の流れ
個別の居宅サービス計画作成の流れ


施設サービス計画作成の流れ
施設サービス計画作成の流れ

利用者または家族に説明同意を得た訪問介護計画に基づいて、 訪間介護員(ホームヘルパー)が利用者にサービスを提供します。

このプロセスでは、訪間介護計画書に書かれていないサービスの提供は認められないと言うことです。

それは同時に、介護計画書に記載のない介護サービスの提供に対しては、介護報酬の請求が出来ないという事になります。

実際のサービス提供の後に、そのサービス提供の具体的な記録として、サービス提供記録が作成されます。

サービス提供記録は、提供した具体的なサービスの内容等を記録するとともに 利用者からの申出があった場合には、文書の交付その他適切な方法により、その情報を利用者に対して提供しなければならないとされています。

その記録すべき記載項目は、

  1. サービス提供日
  2. サービス提供時間(実時間)
  3. サービス内容
  4. 提供者の氏名
  5. 利用者の心身の状況
  6. その他(送迎時間ほか)
    とされています。

サービス提供記録は、提供の記録であり、サービス提供の証となります。

この記載内容が介護報酬の請求根拠となりつますので、実地指導においてもサービス提供記録に基づいて、提供サービスの内容と妥当
性の確認がなされる事となります。

訪問介護計画書には、その介護計画の到達点である「日標」が書かれています。

この目標は、訪問介護事業所が行うアセスメントとケアマネージ ャーのケアプランに基づいて設定されます。

この目標が達成されたと評価された時点で、その訪問介護計画は役割を終えます。

新たな目標設定のためのアセスメントを行った後に、新たな目標を定めた訪問介護計画書を作成して、利用者または家族への説明同意とその証として署名または記名捺印による記録というケアマネジメントプロセスを繰り返します。

介護計画書の目標が達成されたか否かの評価を行う作業がモニタリングです。

モニタリングを行う頻度に定めは有りませんが、その性格上1~」3ヶ月毎に行うことが求められます。

モニタリングの主な評価項目は、

  1. 目標の達成度
  2. プランに基づいたケアが実施されているか
  3. 利用者や家族のニーズはどうか
  4. サービス担当者の意見、評価、要望
  5. 利用者の状況の変化
    となります。

なお、訪問介護計画書を作成する時期としては、利用者の新規契約時、指定更新時、区分変更時、状況に大きな変化があった場合、そしてモニタリングの結果として,目標が達成されたと評価された時点です。


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