「介護保険論」~機能回復が取り残された通所系サービス~
こんにちは。大阪の介護専門税理士の松本昌晴です。
池田省三氏の「介護保険論」から通所介護について書かれているところを見ていきましょう。
池田氏は、通所介護について「家族に役立つサービスではあっても、要介護高齢者本人のためのサービスとして、どこまで役に立っているか」と疑問を投げかけています。
そして、Y市の行政データから通所介護と通所リハビリテーションの事業所別の要介護の変化を示し、1事業所所(夢のみずうみ村)を除いて、すべての事業所において要介護度が悪化している実態を明らかにしています。
その原因として、
- 介護報酬は基本的に同一であり、サービスの質的向上へのインセンティブが働かないこと。
- 介護報酬が要介護度別に設定されているため、利用者の状態を改善すればするほど、大きな減収になっていること。
の2つを挙げています。
以上の池田氏の主張から、今後の介護保険制度の改定を予測すると、機能訓練型のデイサービスの介護報酬は上がり、レスパイト型(お預かり型)のデイサービスの介護報酬は下がると考えられます。
厚生労働省の「地域包括ケア研究会報告書」や「介護保険制度の見直しに関する意見」に、それをうかがわせるような記述があります。
「地域包括ケア研究会報告書」より
通所介護については、その機能に着眼し、
- 預かり機能(レスパイト)に特化したサービス
- 機能訓練を中心とした自立支援の要素の強いサービス
- 専門性を持って認知症ケアに特化したサービス
- ナーシング機能を持つサービス
等に分類・整理することができる。
厚生労働省の社会保障審議会介護保険部会の「介護保険制度の見直しに関する意見」(平成25年12月20日)より
通所介護については、事業内容の自由度が高く、介護や機能訓練に重点を置いたものとレスパイト中心のものがあり、また、事業所の規模やサービス提供時間の長さも異なるなど、様々なサービス提供の実態がある。
特に小規模の事業所については、介護報酬単価が高く設定されており、実際に参入事業所数も、小規模事業所の増加が顕著な状況にある。
このような実態を踏まえ、その機能に着目した上で、通所介護の事業内容を類型化し、それに応じて介護報酬にメリハリをつけることを検討することが必要である。
また、効果的・効率的な事業展開を促進する観点から、サービス提供実態を踏まえた上で、人員基準の緩和を検討することが必要である。
デイサービスの事業内容類型化と報酬体系の予測
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