「介護保険論」~家族介護の補完にとどまる訪問介護~

こんにちは。大阪の介護専門税理士の松本昌晴です。

「介護保険論」

故池田省三氏の「介護保険論」から、訪問介護について記載されているところをご紹介します。

現状の訪問介護は、次の実態から「家族介護の補完にとどまる」と指摘しています。

  1. 訪問介護の平均月利用回数は、最も介護の手間がかかる要介護度5で、月33.6回(1日約1回)にすぎず、重度の要介護高齢者の生活を支えることは不可能である。
  2. 訪問介護の提供サービス時間は1日約2時間程度で、残り22時間は空白となっている。これでは、同居家族の介護負担がわずかに軽減されるだけである。

以上の訪問介護の実態を改善するためには、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を成功させなければならないと結論づけています。

ここで、「介護保険論」を参考に今後、訪問介護事業所が選ぶべき道を私見を混じえて記述したいと思います。

訪問介護事業者が選ぶ道

自費となる生活援助サービスをするかしないか

掃除、洗濯、料理などの生活援助サービスは、いずれ介護保険外になると予測されます。

そのときに備えて、サービスメニューや料金など他の事業者と差別化されたものを準備、検討する必要があります。

また、有料家政婦紹介所について情報収集し、介護保険外のサービスにも対応できる体制を整えるため開設を検討すべきです。

重度者対応ができるように体制を整えるかどうか

高齢者は、今まで長期に病院や施設に入院などができましたが、今後は難しくなり在宅に戻らざるをえません。

そうなると、今まで重度要介護者に慣れていないヘルパーさんなどの職員教員や医療行為ができるような体制を整えるかどうか判断しなければなりません。

重度者に対応する体制を整えるためには、時間と費用がかかりますが、対応できないとケアマネさんからの紹介が減るかもしれません。

24時間365日のサービス体制を整えるかどうか

今やコンビニと同じぐらいあると言われている訪問介護事業所の数ですが、コンビニが24時間365日営業しているのに対して、すべての訪問介護事業所は高齢者の介護に携わる重要なサービスにもかかわらず24時間365日対応していません。

少なくとも土・日曜日や祝日の対応ができなければ、生き残ることができないかもしれません。

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」に参入するかどうか

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、現状あまり普及していません。

しかし、上述しましたとおり池田氏は「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」を成功させなければならないと強調しているように、厚生労働省も2025年までに普及することを目標としています。

従って、訪問介護事業者は「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」の普及状況を見据えながら、中長期的に参入すべきか検討しなければなりません。

成功モデルである登録ヘルパーから社員ヘルパーへの転換をするかどうか

大都市では、登録ヘルパーを募集しても集まらないのが現状です。

そこで社員ヘルパーを採用して売上を上げるモデルに変更しなければ拡大することは難しくなっています。

売上を上げるためには「特定事業所加算」を取得する必要があるのですが、ご利用者の負担が増える加算取得にケアマネさんは敬遠しがちです。

そこで、ケアマネさんには加算取得がご利用者にとってもメリットがあることを、丁寧に説明して理解を得る必要があります。




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