処遇改善加算とはなんですか?(大阪市港区:40代女性)
こんにちは!大阪の介護専門税理士 松本会計事務所 副所長の高田純です。
介護職員として勤務されてらっしゃった方は、給与として「もらう」ものだったかと思いますが、事業主側からすれば、給与として「支払う」べきものになります。
概要としては、キャリアパスや就業規則などを作成・運用することで、請求に加算として多めにもらえるものですが、処遇改善加算としてもらったものは、基本的に従業員に支給しなければならず、支給額がもらった額に到達しない場合には返還しなければなりません。
立場が変われば、制度についての理解も必要となります。
制度の概要
処遇改善加算は正式には「介護職員処遇改善加算」と言い、介護職員の職場定着のための取り組みとして厚生労働省によって創設された制度です。
職員にとって働きやすい職場環境の整備を行ったり、キャリアアップにつながる仕組みを作った事業所に対して、介護職員の人数に応じて加算が支給されます。
事業所は受け取った加算相当額を職員の給料に上乗せし、賃金アップにつなげるという仕組みです。
厚生労働省の指南によると、2025年にはおよそ38万人の人手不足が予測されています。一方で、全職種を対象とした賃金調査によると、介護職員の賃金は全産業の平均と比較して低く、職員の獲得や定着に苦慮している介護事業所が多いというのが現状です。
そのために、現場で働く人材を確保することや、将来的に介護を支えてくれる人材育成を考えて、介護職員の賃金改善に充てることを目的にこの制度が創設されました。
申請と支給の方法
事業所は、職員のキャリアアップにつながる仕組みや職場の環境改善の計画(介護職員処遇改善計画書)と、就業規則・給与規程などの必要書類を、都道府県または市町村へ届け出ます。届け出を受けた自治体がその報告を元に「介護報酬+賃金の上乗せ費用」を算出し、事業所に支払うという仕組みです。
事業所は、受け取った加算金を全額きちんと職員に還元することが法律で義務付けられています。支給方法としては毎月の給与のベースアップとするか、一時所得として還元するなど、それぞれの事業所の裁量に任されます。
不正受給と見なされないよう注意が必要
事業所は自治体に対し「実績報告書」を提出する必要があります。実績報告に不正があったことや、悪質と判断される要件不備が実地指導などで判明した場合、介護保険事業所としての指定取り消しや、受領した金額の返還を求められたケースも報告されています。
要件不備とならないよう、以下の点に注意しましょう。
1.職員の職責や規定を定め、研修計画、記録を作成しておくこと。
2.賃金改善の方法を、職員に十分に認知されるよう周知すること。
3.処遇改善加算総額と賃金改善額を比較し、必ず賃金改善額が上回っていることを確認すること。
申請の要件
申請には、「キャリアパス要件」と「職場環境等要件」を満たす必要があります。
キャリアパス要件にはⅠ、Ⅱ、Ⅲの3種類があり、申請できる加算の金額は、どの要件を満たしているかによって異なります。
<参考>(厚生労働省 「介護職員処遇改善加算」のご案内より)
▶キャリアパス要件:
Ⅰ…職位・職責・職務内容に応じた任用要件と賃金体系の整備をすること
Ⅱ…資質向上のための計画を策定して、研修の実施または研修の機会を設けること
Ⅲ…経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み又は一定の基準に基づき定期に昇給を
判定する仕組みを設けること。
▶職場環境等要件:賃金改善以外の処遇改善(職場環境の改善など)の取組を実施すること
あなたの事業所が算定要件を満たしているかどうか、また、加算額の計算方法など詳細については、"各自治体の介護保険の担当部署"に問い合わせてみてください。
また、社長(事業主)については、介護職員の立場であったとしても、処遇改善加算は給与として受け取ることができませんので、ご注意ください。
詳しくは「社長は介護に従事していても介護職員処遇改善加算の対象外」をご覧ください。↓↓↓
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